2014年12月24日

探偵の探偵




・内容(「BOOK」データベースより)
中堅調査会社が併設する探偵養成所に、決して笑わぬ美少女・紗崎玲奈が入校する。探偵のすべてを知りたい、しかし探偵にはなりたくない、という彼女には、自分から言えぬ過酷な過去があった。調査会社社長・須磨は玲奈の希望を汲み、探偵を追う“対探偵課”の探偵として彼女を抜擢した。怒涛の書下ろしシリーズ開幕。


 最近は『鑑定士Q』シリーズが話題の著者だが、僕にとっては松岡圭祐氏といえば『催眠』や『千里眼』シリーズである。

 もっとも『千里眼』は、シリーズが進むにつれて、どんどん大がかりかつ荒唐無稽になり、最後の方で離れたが・・・。

 ということで、『千里眼』シリーズ以来の松岡作品である。


 主人公・紗崎玲奈が「探偵になる気はないが、探偵の全ての知りたい」という、その理由。

 そこに危うさを感じた探偵学校の校長=調査会社スマ・リサーチの社長・須磨が彼女を雇うために作った、悪徳探偵業者を追いかけるための「対探偵課」。

 この設定は非常に良い。

 探偵業界の内幕、探偵テクニックの描写も、(小説としての嘘も当然混ざっていると思うが)興味深い。


 しかし・・・。

 作家としてデビューして、もうベテランといえる年数と作品数だと思うが、文章力は向上していない。

 三人称視点のはずの地の文に、一人称視点が混入する。

 言葉の誤用、おかしな表現がある。

 個性的・独創的・実験的な文体と言えるものではなく、単なる注意力欠如の結果だと思う。


 人物の出し入れも下手。

 明らかな罠に嵌る主人公。

 大物っぽく描かれているが、ヘマばかりで小物の悪役。


 魅力的なプロットを、もっと筆力のある作家に売って作品化してもらえば、はるかに面白くなっただろうに。

 この作品を褒める書評家や有名書店員の見識を疑う。


〔評価〕☆☆☆☆☆(星ゼロ)


 次は、『屍者の帝国』(伊藤計劃+円城塔・著/河出文庫)。
posted by ふくちゃん at 22:05| Comment(0) | TrackBack(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年12月18日

魔道師の月




・内容(「BOOK」データベースより)
こんなにも禍々しく怖ろしい太古の闇に、なぜ誰も気づかないのか。繁栄と平和を謳歌するコンスル帝国の皇帝のもとに、ある日献上された幸運のお守り“暗樹”。だがそれは次第に帝国の中枢を蝕みはじめる。闇をもたぬ稀有な魔道師レイサンダー、書物の魔道師キアルス。2人は人々を破滅に導く太古の闇を退けることができるのか。『夜の写本師』で読書界を瞠目させた著者の第2作。


 衝撃的なデビュー作『夜の写本師』に続く第2弾。

 時系列的には(一応)前作の主人公カリュドウの時代の遥か昔、約1,000年前である。

 今作の主人公の1人、キアルスは前作で登場したギデスディン魔法の創始者であり、文字や言葉、書物を依り代とするその魔法がどのように作られたのか、若かりし日の彼が描かれる。

 キアルスは400年前に遡り、<星読み>のテイバドールの人生を追体験し(というよりもテイバドールとして生き)、人として魔道師として一気に成長する。

 もう1人の主人公、大地の魔道師レイサンダーは、人類創世の昔より永らえ再び蘇った太古の闇、“暗樹”と遭遇し、恐怖と無力感から遁走。だが、テイバドールとして“暗樹”を封じたキアルスと出逢い、世界を救うために協力して立ち向かう。

 “暗樹”を絶滅することは不可能だが、数百年眠らせることは可能なのだ。

 “暗樹”が象徴する“闇”、魔道師が宿命的に抱える“闇”。全ての人間の血の中にも流れているという“闇”。ファンタジーではよく使われる題材だが、説得力を持って描かれている。

 本書は完全に独立した物語として読めるし、『夜の写本師』と合わせて読めば、さらに楽しめる(読む順番は関係なし)。

 初めて著者の世界に触れた『夜の写本師』に比べると、どうしても衝撃の度合いは下がってしまうが、それは私という読者の我儘かな。

 レイサンダーの子孫が登場する続編も出ているので、ますます楽しみだ。

〔評価〕★★★☆☆


 次は、『探偵の探偵』(松岡圭祐・著/講談社文庫)。
posted by ふくちゃん at 20:06| Comment(0) | TrackBack(0) | ファンタジー・幻想文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年12月08日

共和政の樹立 小説フランス革命12




・内容(「BOOK」データベースより)
1792年8月の蜂起で王権が停止され、国王一家はタンプル塔に幽閉された。パリの民衆は反革命の容疑者たちを次々に虐殺。街に暴力の嵐が吹き荒れ、立法議会に代わって国民公会が開幕すると、新人議員サン・ジュストの演説をきっかけに国王裁判が開かれることに。議員たちのさまざまな思惑が交錯する中、ついにルイ16世の死刑が確定し−。フランス王政の最期を描く、血塗られた第12巻。


 11巻まで楽しく読んできたが、初めて「楽しめない」巻になった。

 作品の質が下がったからではない。

 これまでも様々な対立があり、血が流れたが、それでも革命全体には前向きなエネルギーが流れていた。

 しかし、ここへ来て、人間の愚かさ、残酷さがクローズアップされる。ことさら煽るような描写ではないながらも陰惨なのだ。

 正義のためなら、人を殺す。

 今も世界のあちらこちらで行われていることだ。

 死刑を目前にしたルイ16世、死刑のその瞬間のルイ16世、彼が何をどのように考えていたかは分からない。この小説のようだったかもしれないし、そうではないかもしれない。

 しかし、度々このブログで触れたが、この作品で描かれるルイ16世は決して凡愚ではない。だから、革命に熱を上げる議員や市井の人々が愚かに見える。

 もし、フランス革命が挫折していたら、今頃世界はどうなっていただろう。

 とにかく、苦い1冊であった。

〔評価〕★★★☆☆


 次は『魔導師の月』(乾石智子・著/創元推理文庫)。
posted by ふくちゃん at 18:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史・時代小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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