2015年03月29日

夜の国のクーパー




・内容(「BOOK」データベースより)
目を覚ますと見覚えのない土地の草叢で、蔓で縛られ、身動きが取れなくなっていた。仰向けの胸には灰色の猫が座っていて、「ちょっと話を聞いてほしいんだけど」と声を出すものだから、驚きが頭を突き抜けた。「僕の住む国では、ばたばたといろんなことが起きた。戦争が終わったんだ」猫は摩訶不思議な物語を語り始める − これは猫と戦争、そして世界の秘密についてのおはなし。


 いつもどこか不可思議なムード漂う伊坂作品。

 今作は完全にファンタジーと言っても良いと思う。なにせ猫が擬人法によってではなく、普通に“私”と会話し(当然ながら当初の“私”は驚き戸惑う)、猫は鼠と会話するのだから(それだけがこの作品をファンタジーと呼ぶ理由ではないが、ネタバレになるので秘す)。

 一方で、ミステリ同様に(でもミステリとは違うタイプの)鮮やかな伏線とその回収がある。


 猫と鼠の関係性は、猫の“僕”の住む国と侵略してきた鉄国との関係性との相似性を示すことに途中で気付いた。私が気付くぐらいだから、他の読者もきっと気付く。

 しかし、物語は「分かった!」と思った私の想像・予想の遥か上を行く。


 序盤から軽く違和感を覚える箇所がいくつもあるのだが、あまりに些細なことなので、見過ごしつつ先へ先へと読み進む。

 まさかこんな話だったとは・・・とあっけに取られて、違和感を覚えた箇所を再確認。

 すがすがしいほど、見事にやられた。


 怖い物語でもある。

 戦争というもの。

 人が権力者に支配されること。

 それがどういうことか。

 外に敵を作って、団結を促して支配する。

 いろんな国の権力者がやっていることそのままである。


〔評価〕★★★★☆


 次は『音楽の進化史』(ハワード・グッドール著/夏目大・訳/河出書房新社)
posted by ふくちゃん at 12:31| Comment(0) | TrackBack(0) | ファンタジー・幻想文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年03月28日

舟を編む




・内容(「BOOK」データベースより)
出版社の営業部員・馬締光也は、言葉への鋭いセンスを買われ、辞書編集部に引き抜かれた。新しい辞書『大渡海』の完成に向け、彼と編集部の面々の長い長い旅が始まる。定年間近のベテラン編集者。日本語研究に人生を捧げる老学者。辞書作りに情熱を持ち始める同僚たち。そして馬締がついに出会った運命の女性。不器用な人々の思いが胸を打つ本屋大賞受賞作!


 広大な言葉の海を渡る舟・・・1冊の辞書を作るのに、どれほどの労力と長い時間が必要とされるか。映画でも感じたが、原作を読んで改めて感じ入った。

 紙の辞書に敬意を払いたくなる。

 どこか不器用だが、思いを込めて静かに地道に仕事を積み重ねる人たち(一見チャラい西岡でさえそうである)。

 その姿にうるうる。

 真面目で誠実すぎるがゆえの馬締のトボけた言動には、思わず電車の中で吹き出しそうになり、必死にこらえる(笑)。

 いいお仕事小説だ。

〔評価〕★★★★★

 次は、『夜の国のクーパー』(伊坂幸太郎・著/創元推理文庫)。
posted by ふくちゃん at 14:09| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年03月23日

体育館の殺人




・内容(「BOOK」データベースより)
風ヶ丘高校の旧体育館で、放課後、放送部の少年が刺殺された。密室状態の体育館にいた唯一の人物、女子卓球部部長の犯行だと警察は決めてかかる。卓球部員・柚乃は、部長を救うために、学内一の天才と呼ばれている裏染天馬に真相の解明を頼んだ。アニメオタクの駄目人間に−。“平成のエラリー・クイーン”が、大幅改稿で読者に贈る、第22回鮎川哲也賞受賞作。待望の文庫化。


 平成のエラリー・クイーンか。

 エラリー・クイーン。もちろん、名前は知っているが、読んだことはない。このあたりがエセ・ミステリ・マニアの所以である。

 しかし、たまたま僕が読んでいるミステリが偏っているせいかもしれないが、ここまでロジックな謎解きにこだわるミステリって、最近は少ないんじゃないか?

 そういう意味では新鮮だったし、楽しめた。

 すべてが解決・・・と思ったら、やや後味の良くないさらなる結末が用意されていて、そこが良い。

 5分単位でのアリバイの確認に、そこまで自分の行動を覚えているなんてあり得ないと思う向きもあろうが、ここは現実の世界ではなく、厳密な論理が支配するフィクションの世界。それを受け入れねばなるまい(笑)。

 それよりも若手刑事が、自分の妹のいる高校に捜査に行くことを、なぜそんなに嫌がるのか理解できない(笑)。

 そして優秀な上司警部が、推理で高校生に負けるなんて、理解できない・・・と言ったら、名探偵のお話は成り立たないので、無視。

 既に続編が単行本で2冊。文庫化が楽しみだ。

〔評価〕★★★★☆


 次は『舟を編む』(三浦しをん・著/光文社文庫)。
posted by ふくちゃん at 21:09| Comment(0) | TrackBack(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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