2015年07月27日

烏に単は似合わない/烏は主を選ばない




・烏に単は似合わない 内容(「BOOK」データベースより)
人間の代わりに「八咫烏」の一族が支配する世界「山内」で、世継ぎである若宮の后選びが始まった。朝廷で激しく権力を争う大貴族四家から遣わされた4人の后候補。春夏秋冬を司るかのようにそれぞれ魅力的な姫君たちが、思惑を秘め后の座を競う中、様々な事件が起こり・・・。史上最年少松本清張賞受賞作。

・烏は主を選ばない 内容(「BOOK」データベースより)
人間の代わりに「八咫烏」の一族が住まう世界「山内」で、優秀な兄宮が廃嫡され、日嗣の御子の座についた若宮。世継ぎの后選びには大貴族の勢力争いが絡み、朝廷は一触即発の異常事態に陥る。そんな状況下で、若宮に仕えることになった少年・雪哉は、御身を狙う陰謀に孤立無援の宮廷で巻き込まれていく・・・。


 『烏に単は似合わない』は、著者・阿部智里氏のデビュー作であり、松本清張賞受賞作。

 裏表紙の紹介文などを読む限り、ファンタジーなのに、なぜに松本清張賞?

 読み始めても、その疑問は解けなかった。

 最後に意外な展開になるまでは。

 この作品はファンタジーでありながら、確かに、作中で殺された女性の死の真相を巡るミステリでもあったのだ。

 本格ミステリと呼ぶには、フェアネスに疑問符がつくが・・・。

 しかし、まさかこの女性がこんな女性だったとは・・・という意外性には、インパクトがあった。

 舞台設定と次代の王(若宮)の后候補の4人のさや当て、そして終盤の良い意味での裏切りは、充分楽しめた。

 茫然とさせられるような後味の悪さと甘さの何とも言えぬブレンドぐあいも良い。


 シリーズ第2弾にあたる『烏は主を選ばない』は、『烏に単は似合わない』と同じ時間軸の物語を若宮の側から描いた作品。

 なぜ、本来なら主役級でもおかしくないキャラクターである若宮が、『烏に単は似合わない』にはほとんど登場しなかったのか、裏側で進んでいたもうひとつのストーリーが明らかになる。

 『烏に単』と『烏は主』は、2つで1つの作品だったのだ。

 『主』も、終盤の意外性という点では『単』に負けていない。うつけと評される若宮の変人ぶり(理由がある)、望まぬままに最側近の近習となった、ぼんくらと評される雪哉の遣り取りも楽しい。

 アマゾンレビューでは2作ともイマイチの評価だが、僕は気に入った。

 腑に落ちないのは、登場人物が八咫烏の化身である必要があるのかという点である。

 舞台設定の根幹が腑に落ちないというのも困ったものだが(笑)。

 物語の中心を担う、この世界の貴族たちは烏の姿にならない。烏の姿に変化するのは、下々の者だけである。なので、余計に彼らが本当は人間ではなく、八咫烏が人形(ヒトガタ)を取っているだけという設定の必然性が分からない。

 まあ、面白いからいいけど。

〔評価〕★★★★☆


 次は、『ジャイロスコープ』(伊坂幸太郎・著/新潮文庫)。
posted by ふくちゃん at 21:28| Comment(0) | TrackBack(0) | ファンタジー・幻想文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年07月21日

リカーシブル




・内容(「BOOK」データベースより)
越野ハルカ。父の失踪により母親の故郷に越してきた少女は、弟とともに過疎化が進む地方都市での生活を始める。だが、町では高速道路の誘致運動を巡る暗闘と未来視にまつわる伝承が入り組み、不穏な空気が漂い出していた。そんな中、弟サトルの言動をなぞるかのような事件が相次ぎ・・・。大人たちの矛盾と、自分が進むべき道。10代の切なさと成長を描く、心突き刺す青春ミステリ。


 転生を重ねる姫の民話。民話を調べる人間に降りかかる災厄や死。それらを見通すような弟サトルの未来視。

 少し不思議で超常現象的な物語。

 しかし、ミステリだから、一応論理的な解決はある。

 でも完全な解決ではなく、あえて割り切れない謎を残すところがいい。

 主人公ハルカの思考や語彙は、確かに中1らしくない。

 だが、読んでいるうちに全く気にならなくなる。こういう中学1年生は絶対にいない、と言い切ることは僕にはできない。

 少なくとも、こういう感性や視点を持つ中学生がいても不思議ではない。

 ハルカのどこかハードボイルドな語りが面白くて、哀しい。

〔評価〕★★★★☆


 次は、『烏に単は似合わない』『烏は主を選ばない』(阿部智里・著/文春文庫)。
posted by ふくちゃん at 21:13| Comment(0) | TrackBack(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年07月07日

光圀伝(上・下)




・上巻内容(「BOOK」データベースより)
「なぜあの男を自らの手で殺めることになったのか」老齢の光圀は、水戸・西山荘の書斎でその経緯と己の生涯を綴り始める。父・頼房の過酷な“試練”と対峙し、優れた兄・頼重を差し置いて世継ぎに選ばれたことに悩む幼少期。血気盛んな“傾奇者”として暴れる中で、宮本武蔵と邂逅する青年期。やがて文事の魅力に取り憑かれた光圀は、学を競う朋友を得て、詩の天下を目指す−。誰も見たことのない“水戸黄門”伝、開幕。

・下巻内容(「BOOK」データベースより)
「我が大義、必ずや成就せん」老齢の光圀が書き綴る人生は、“あの男”を殺めた日へと近づく。義をともに歩める伴侶・奏姫と結ばれ、心穏やかな幸せを掴む光圀。盟友や心の拠り所との死別を経て、やがて水戸藩主となった若き“虎”は、大日本史編纂という空前絶後の大事業に乗り出す。光圀のもとには同志が集い、その栄誉は絶頂を迎えるが−。“人の生”を真っ向から描き切った、至高の大河エンタテインメント!



 水戸黄門様こと水戸光圀。

 諸国漫遊は、実際にはしていないこと。進取に富み、大日本史を編纂し、水戸学を創始したこと。

 知っていることは、その程度。しかも、上記の知識さえも不正確なものであった。

 浅学菲才の身には、この『光圀伝』のどこまでが史実で、どこからが虚構かは正確には分からない。

 正室・泰姫の侍女・左近は架空の人物かと思ったら実在で、光圀の最期を看取るシーンも史実に近いらしい。

 編者不明の『土芥寇讎記』(どかいこうしゅうき)』。その存在をこの小説で初めて知ったのだが、五代将軍綱吉当時に編纂された全国諸藩の“通信簿”のようなものらしい。その成立に関する説は、説得力があるように思える。

 自ら抜擢し、自分の後を継いだ子の下で水戸藩大老となった藤井紋太夫(ふじいもんだゆう)を、最終的に自らの手で屠るわけだが、なぜそんなことをしたのか、不明らしい。その殺害のシチュエーションは異様である。一応は、綱吉の側用人・柳沢吉保と結託して、光圀失脚を画策したためという説が有力らしいが、光圀が隠居した後の出来事であり、しっくりこない。

 この小説は、光圀の紋太夫手討ち(殺害)のシーンに始まり、同じシーンで終わる。

 そこには、光圀の幼少期から老年期の生き様と苦しんだ後にようやく見出した大義、光圀を敬愛してやまない紋太夫が史書編纂・研究の中で見つけた水戸家を思うゆえの大義の対立があった。

 これにも説得力があるし、この着想がこの作品を描かせたのかな。

 光圀がこれほど文武に秀でた英傑とは知らなかった。荒れていた若い時代も含めて、いささかカッコよく描き過ぎのような気もするが・・・。

 欲を言えば、もっと長くても良いから、様々なエピソードをじっくり描いて欲しかった。やや駆け足の印象が残る。

 タイミングを合わせて、冲方氏による「『光圀伝』謎解き散歩」(新人物文庫)も刊行された。読んでみよかな。

〔評価〕★★★★☆


 次は、未定。
タグ:光圀 黄門 冲方
posted by ふくちゃん at 21:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史・時代小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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