2010年02月14日

サクリファイス


サクリファイス
著者名:近藤史恵(著)
出版社:新潮社
出版年:2010.01
ISBN :9784101312613


 2008年本屋大賞第2位。


・内容
ぼくに与えられた使命、それは勝利のためにエースに尽くすこと−。陸上選手から自転車競技に転じた白石誓は、プロのロードレースチームに所属し、各地を転戦していた。そしてヨーロッパ遠征中、悲劇に遭遇する。アシストとしてのプライド、ライバルたちとの駆け引き。かつての恋人との再会、胸に刻印された死。青春小説とサスペンスが奇跡的な融合を遂げた!大藪春彦賞受賞作。
(「BOOK」データベースより)


 小説を読む愉しみのひとつに、それまで知らなかった世界を知るということがある。僕にとってはこれもそんな1冊。

 自転車ロードレースは、日本ではマイナースポーツ。ぜいぜい「ツール・ド・フランス」という名前を知っているくらいだ。この作品を読んで、このスポーツが肉体だけなく、頭脳の戦いであることがよく分かった。

 そもそも単にヨーイドン!で、誰が一番速いかを競うだけだと思っていた。まあ、そういうレースもあるのかも知れないが、ここで描かれるのはチーム戦である。エースを勝たせるため、他のメンバーはアシストとして走る。たとえば、エースの前を走って風除けになる、他のチームのペースを攪乱する、エースの自転車にトラブルがあれば自分の自転車の部品を差し出してリタイアする、などなど。

 アシストは基本的に自分の順位、自分の優勝に拘らない。チームの総合優勝のために戦略上必要な場合を除いては。

 主人公の誓(ちかう)は、将来のエースになれるほどの潜在力を秘めながら、そういう欲が全く無い。勝利に拘る生き方から解き放たれた“自由”を満喫している(かつては陸上界の有力ランナーとして勝利を求められてきた)。時にその無欲さが周囲にさざなみを立てる。

 そして、あまり感情表現のないエースの石尾。かつて、自分の地位を脅かしたチームの若手を、事故に見せかけて下半身不随にしたという噂が付き纏う。噂に違和感を覚えている誓が、過去の真相を突き止めるあたりは、ミステリとして読ませる。

 サクリファイス=犠牲。これはもちろん、エースに対するアシストの存在を意味しているのだが、石尾の本当の姿、石尾の想いが最後に明らかになるとき、もうひとつの“犠牲”の意味が、感動と共に立ち上がってくる(まあ、大感動とは言わないが)。

 280ページの中編だが、読み応えはドッシリ。ただ、誓の前に現われる過去の恋人が個人的にはウザイ。


 次は『向井帯刀の発心 物書同心居眠り紋蔵』(佐藤雅美・著/講談社文庫)。
posted by ふくちゃん at 20:03| Comment(3) | TrackBack(1) | スポーツ小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
チームスポーツ物は大好きなので気になります。
あまり歯切れのよい感想ではないようですが
ぶっちゃけお勧めですか??
Posted by なつき at 2010年02月16日 00:02
ふくちゃんさん、こんにちは。
文庫になったんですね、この本。
友達がロードレース好きなので、選手名鑑やらを片手にビデオを見たりしています。駆け引きが面白い!!そして、ロードレースの選手は男前が多い!!
この本、単行本を借りて読んだのですが、文庫になったのなら買ってもいいかと思っています。
Posted by kinkacho at 2010年02月17日 09:54
>なつきさん。
ぶっちゃけ、お勧めか?
むむむ。ちょっと迷います。
石尾が最後に選んだ行為に違和感が覚えるのです。こんな考え方でこういうことをする人間がいるのだろうか?と。意外性はありますけど。なんか現実感が・・・。オススメ指数70(100点満点)ということで。結局、中途半端ですが(汗)。

>kinkachoさん。
奥の深そうなスポーツです。イケメンが多いんですか?日本人選手で強い人がいれば見るんだろうけどなぁ。
Posted by ふくちゃん at 2010年02月17日 23:18
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『サクリファイス』
Excerpt: 近藤史恵 『サクリファイス』(新潮文庫)、読了。 あちこちの読書Blogさんで名前を見かけるので気になってました。 ようやく100円でゲットしたので、挑戦。 これは、面白い!! ロ..
Weblog: 観・読・聴・験 備忘録
Tracked: 2014-07-30 21:11
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