2010年12月06日

辛い飴 永見緋太郎の事件簿


 
 これは完成度、高い。

 音楽好きで、ミステリ好きの人は是非!


・内容(「BOOK」データベースより)
天才的テナーサックス奏者・永見緋太郎は、相変わらず音楽一筋の日々を過ごしている。しかし、ひとたび謎に遭遇すると・・・。初来日することになったアメリカのバンドにまつわる人情味溢れる謎を描く表題作「辛い飴」、第62回日本推理作家協会賞を受賞した「渋い夢」、さらに特別篇「さっちゃんのアルト」を加えた全8篇。ライヴ感ある日常の謎的ジャズミステリ、シリーズ第2弾。


 
 まず、単純に音楽ネタ、楽器ネタが楽しい。ジャズは全くというほど聴かず、せいぜい高校・大学の頃に、カシオペアとか高中正義とかスクエア(現T-SQUARE)とか、国内フュージョンを齧ったぐらい。普段はもっぱら、POPS&ROCKしか聴かないけど、それでも音楽モノって、「わかるわかる」ってトコロがあって、嬉しくなる。


 酒に溺れるホームレスとなり、腕も著しく衰えた、かつての狷介なカリスマ&トップ・トランペッター安来と、昔の弟子で今は安来のポジションに身を置き、師匠を罵倒するトランペッター広沢。広沢に挑発され、ろくに鳴らせもしないのに、若手奏者達が結成したビッグ・バンドに加入する安来。広沢の挑発の奥にあったものは・・・苦い展開の後に爽やかな感動がやって来る『苦い水』。

 ひょっとしたら、私は昔、人を殺したかもしれない・・・。人知れず悩む女性ブルースシンガーは、かつて自分がトランペッターからブルースシンガーに転向するきっかけとなった伝説のブルースマンに遭いに行く。名前を、外貌も、今どこで何をしているかも分からない、衝撃の歌声を聞かせてくれたブルースマンの正体とは?そして、そこで起こした事件の真相とは?・・・『酸っぱい酒』

 スランプに陥った永見を誘い、テレビ局の仕事で山奥深い集落にやって来たバンド・リーダー唐島(トランペッター)。そこには、古代から伝わる原始的な土着の雅楽「太貝楽(たいがら)」が存在していた。その独自の音楽が伝える古代の秘密とは・・・?まるで、北森鴻氏の蓮杖那智シリーズを彷彿とさせる、民俗学的アプローチが斬新で、しかも、そのトンデモ解釈ぶりが楽しい『甘い土』。

 ジャズ・ファンのプロ野球選手・金本の依頼で、金本がバッターボックスに立った時の応援歌を演奏することになった唐島。唐島の演奏を邪魔するかのごとく響く下手なトランペットの目的は?入院するファンの子どものために、ホームランを約束した不振の代打専門打者・鉢光が取った行動の真意は?・・・『塩っぽい球』。

 そのほか、永見の迫力あるサックス・プレイの描写に、思わず映像化希望!と言いたくなった、グランド・ピアノが密室から消失する『渋い夢』。平凡なアルバムにネット・オークションで高値が付く理由とは? − その裏に隠れた事件の意外性が読み応えある『淡白な毒』。

 最後に、ほっこりした読後感が幸せな文庫本だけのボーナス・トラック『さっちゃんのアルト』。

 上の「内容」に触れられた表題作『辛い飴』もとてもいいけど、他の作品も全ていい。アニメ化、どう?


 次は、『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです 村上春樹インタビュー集1997-2009』(村上春樹・編著/文藝春秋)。


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posted by ふくちゃん at 20:39| Comment(0) | TrackBack(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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