2011年03月04日

女王国の城

 

 単行本の刊行ベースでは15年、文庫本では12年ぶりのシリーズ第4作。日本の推理作家の団体=本格ミステリ作家クラブが選ぶ本格ミステリ大賞の第8回(2008年)受賞作である。


・上巻内容(「BOOK」データベースより)
ちょっと遠出するかもしれん。そう言ってキャンパスに姿を見せなくなった、われら英都大学推理小説研究会の部長、江神さん。向かった先は“女王”が統べる聖地らしい。場所が場所だけに心配が募る。週刊誌の記事で下調べをし、借りた車で駆けつける − 奇しくも半年前と同じ図式で、僕たちは神倉に“入国”を果たした。部長はここにいるのだろうか、いるとしたらどんな理由で − 。

・下巻内容(「BOOK」データベースより)
江神さんと再会できてほっとしたのも束の間、人類協会の総本部で大事件が発生。それなのに、協会は外部との連絡を断ち自力で犯人を見つけるという。どうしてこうなってしまうの?殺人事件に巻き込まれるだけでたくさんなのに、また閉じ込められてしまった。翌朝轟いた銃声は事態をさらに悪化させたけれど、これを好機と見てモチさんとアリスが行動を開始、織田さんと私も・・・。


 小説内の時間は前作から半年後なので、例によって携帯電話やインターネットは一般化していない。

 また、前作のように交互ではないが、やはりアリス視点のパートとマリア視点のパートで描かれる。

 しかし、今回のクローズドサークルは、天災など不可抗力によって作り出されたものではなく、急成長を遂げた宗教団体による江神・望月・織田・有栖川(アリス)・有馬(マリア)ら英都大学推理研究会とその他の来訪者に対する、いわば軟禁によってもたらされる。

 この宗教団体=人類協会には、反社会的な思想や実践はない。創設者の血を受け継ぐ年若い女性を新代表に迎え、地元の人間を中心に日本国内はもちろん、海外でも多くの信者を獲得し、宇宙からいずれ訪れる指導者の再臨を待ちながら、周囲との大きなトラブルもなく比較的平和に運営されているのである。

 だが、そんな穏やかな人間の集まりであるはずの人類協会内部で3つの殺人事件が起こる。なぜか、人類協会の幹部たちは、犯人を自分たちで見つけるまでは警察には一切連絡しない、江神たち来訪者にも外部との接触を許さないという態度を頑なに貫く。塔に篭って瞑想中の人類協会代表は、全く姿を見せない。

 前半はゆるやかに物語が進んでいくが、4作目ともなるとレギュラー・メンバーのやりとりを読んでいるだけでも楽しく、退屈しない。

 そして、立て続けに事件が起きる後半の活劇度は、シリーズ中ナンバー1。11年前の未解決事件の真相と今回の一連の事件の関連を見抜き、犯人を指摘する江神の推理、その切れ味はもちろん素晴らしい。

 「30歳までに、学生のまま死ぬ」と正気を失った母親に予言され、兄もまた母親の予言の通り早逝したという過去を持つ江神。彼の抱える哀しみが、彼の探偵としての態度を規定しているように思えるが、そこがいい。

 江神&学生アリス・シリーズは、長編5部作と短編集2冊で完結するらしい。次は短編集の予定らしいが、完結編を読めるのはいつの日か。とりあえず、ここまでの僕の中での順位は、

1位 双頭の悪魔
2位 女王国の密室
3位 孤島パズル
4位 月光ゲーム

というところ。『双頭の悪魔』の畳み掛けるような推理は圧巻だ。


 次は、『地図男』(真藤順丈・著/MF文庫)


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posted by ふくちゃん at 22:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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