2009年「本格ミステリ大賞」受賞作であり、2009年の「このミステリーがすごい!」と「本格ミステリ・ベスト10」で共に第3位。
著者の「牧薩次」は、「辻真先」氏の変名であり、『仮題・中学殺人事件』に始まる「スーパー&ポテト」シリーズの探偵役の名前でもあるそうだ(読んだことない)。辻氏といえば「迷犬ルパン」シリーズ(読んだことない)や、アニメ脚本家としての印象の方が、僕には強い。
・内容説明(裏表紙より)
第2次大戦末期の福島県の温泉地、東京からやってきた少年・本庄究は、同じく戦火を逃れてこの村に暮らしていた画家の娘・小仏朋音に強い恋心を抱く。やがて終戦となり、この地で駐留軍のアメリカ兵が殺されるという事件が起きる。しかし現場からは凶器が忽然と消えてしまう。昭和43年、福島の山村にあるはずのナイフが、時空を超え瞬時にして西表島にいる女性の胸に突き刺さる。昭和62年、東京にいるはずの犯人が福島にも現れる。3つの謎の事件を結ぶのは、画壇の巨匠である男の秘められた恋であった。
<他者にその存在さえ知られない罪を完全犯罪と呼ぶ。では、他者にその存在さえ知られない恋は完全恋愛と呼ばれるべきか?>
知らんがな(笑)。
福島の山村と沖縄の西表島の間をナイフが跳躍する大掛かりなトリックは、真相が分かってみれば大したことはないが、犯人と被害者の意外な関係に驚く。ナイフの跳躍より、この関係こそがキモだったのだ。
そして、最大のキモは、<他者にその存在さえ知られない恋>の正体。
主人公の本庄究(後の画家・柳楽糺)の、師匠の娘・小仏朋音に対する永き想いのことだと思っていたら、実は・・・。
なるほどなぁ〜と感心はした。着想は面白いと思う。でも、なんか、もうひとつ乗り切れなかった。東京と福島のアリバイ・トリックの真相も、あまり好みではなかった。
次は、『ほたる 慶次郎縁側日記』(北原亞以子・著/新潮文庫)。
・・・しかし、東北の地震、津波、凄いな。できるだけ、被害が少ないことをお祈りします(そんなことしか、できん)。対処にあたる関係各位の皆さん、がんばって下さい。