2011年05月20日

パワー 西のはての年代記3

 

 『西のはての年代記』3部作の最終作。


・上巻内容(「BOOK」データベースより)
「西のはて」の都市国家エトラは、周囲の諸都市と戦を繰り返していた。幼い頃、姉と共に生まれた土地からさらわれ、エトラの館で奴隷として育った少年ガヴィアには、たぐいまれな記憶力と、不思議な幻を見る力が備わっていた。一家に忠誠心を抱いて成長したガヴィアであったが、ある日を境にすべてが変わっていく−。「西のはて」のファンタジー・シリーズ第3作。ネビュラ賞受賞作。

・下巻内容(「BOOK」データベースより)
悲惨な事件によって愛する人を失ったガヴィアは、エトラを離れて放浪する。逃亡奴隷の集落「森の心臓」や、生まれ故郷である「水郷」をめぐりながら、旅の途中で出会った人々に助けられ、ガヴィアは自分のふたつの力を見つめ直してゆく−。「西のはて」のファンタジー・シリーズがついに完結。ネビュラ賞受賞、ル=グウィンがたどりついた物語の極地。


 奴隷制度が生き続ける都市国家エトラへ、物心もつかないうちにさらわれて来た少年ガヴィアと姉のサロ。姉弟が仕えるアルカ家は、数多く抱える奴隷を牛馬のように酷使することはなく、一定の慈愛を持って接し、質素ながらも寝食を保証している。さらに、子どもの奴隷は、家内にある教室でアルカ家の子どもたちと一緒に、教師(教師も奴隷)による教育を受けることもできる。

 ガヴィアにとっては奴隷の自分が当たり前であり、その境遇に何の疑問もない。アルカ家の子どもたちとは、友達のように、兄弟のように日々を送り、勉強が得意な自分はいずれ教師としてアルカ家の教育を担当するだろうと考えている。

 しかし、そんな幸せは長く続かない。所詮は奴隷であり、アルカ家にとってその家族より大事なものではない。ある事件で大切な人を奪われたガヴィアは、その真実に気付き、失望の中でアルカ家を離れ、彷徨する。

 変わり者の隠遁者クーガと過ごし、逃亡奴隷のグループ「森の兄弟」と暮らし、逃亡奴隷の英雄バーナが打ち立てた木造の自由都市「森の心臓」に身を寄せ、遂には生まれ故郷「水郷」に戻り、血縁者と出会う。

 流浪の中で様々な大人(反面教師も含めて)と出会い、導かれ、ガヴィアは少しずつ現実を受け止めると共に、自分の能力=予知夢のようなヴィジョンを見る力、物語や詩を完璧に覚えて語る力とも向き合っていく。

 だが、生まれ故郷さえも、幼い頃にさらわれ、今更その地の風俗に馴染めないガヴィアにとって、安住の地にはなりえない。アルカ家の追っ手も迫ってくる。

 水郷を出たガヴィアは、人らしく、自分らしく生きられる場所を探して、詩人オレック・カスプロ(第1部『ギフト』の主人公であり、第2部『ボイス』でも重要な役割を果たす)がいるという都市メサンの大学を目指す・・・。

 この最終作もやはり、ファンタジーとしては地味。しかし、前2作同様に、自分ではどうにもならない力に小突き回され、翻弄されながらも、前を向いて生きていく主人公の姿が、読む者に力をくれる。

〔評価〕★★★★☆


 次は『図書館戦争』(有川浩・著/角川文庫)。


posted by ふくちゃん at 20:51| Comment(0) | TrackBack(0) | ファンタジー・幻想文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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