・内容(「BOOK」データベースより)
聖職者民事基本法をめぐり、賛成派と反対派が激しく対立。フランスはシスマ(教会大分裂)の危機に直面し、推進者のタレイランは窮地に追い込まれていた。そんな中、ジャコバン・クラブ代表、国民議会議長と次々に就任し、政界を登りつめつつあったミラボーが、志半ばにして病に倒れる。一度は決別したロベスピエールに、ミラボーが遺した最期の言葉とは − 。巨星、墜つ。喪失の第6巻。
フランス革命を陰日向でリードしてきた巨人・ミラボーが死ぬ。国王政府と議会と人民のバランスを考慮し、現実主義の怠惰にも理想主義の狭量にも陥らず、フランスの新しい形を構想した男。
「・・・静もあれば、濁もあり、それを渾然とさせながら一緒くたに抱え続けているのが、むしろ普通の人間というものだよ」
「・・・もっと自分の欲を持ちたまえ」
「己が欲を持ち、持つことを自覚して恥じるからこそ、他人にも寛容になれるのだ。独裁というような冷酷な真似ができるのは、反対に自分に欲がないからだ。世のため、人のためだからこそ、躊躇なく人を殺せる。ひたすら正しくいるぶんには、なんら気も咎めないわけだからね」
最期を迎える直前、ロベスピエールに語る言葉は示唆に富んでいる。右派・左派・中道を問わず、自分が正義だと信じている阿呆な政治家に噛み締めて欲しい言葉である。結局、ロベスピエールは、ミラボーの期待にではなく、危惧に沿う生き方をするわけだが・・・。
前の巻の感想でも書いたと思うが、もしミラボーが途中退場していなければ、フランス革命はどう進んだのだろう。
そして、ここまでの主役を喪った小説はどう展開していくのか。
〔評価〕★★★★☆
次は、『もろこし桃花幻』(秋梨惟喬・著/創元推理文庫)。