2012年10月09日

風の陣 風雲篇/裂心篇

 


・風雲篇 内容(「BOOK」データベースより)
宇佐八幡の託宣を持ち帰った和気清麻呂によって、皇位を狙った道鏡の野望は阻止された。道鏡を寵愛した称徳女帝も重病に臥し、この機に乗じて藤原一族が復権をかけて動き始める。奈良朝に、陸奥に、真の平和は来ないのか?権力をめぐる新たな野望と暗闘に、道嶋嶋足、物部天鈴ら蝦夷たちは・・・。「立志篇」「大望篇」「天命篇」と書き継がれた著者会心の歴史大河ロマン第4弾、待望の文庫化。

・内容(「BOOK」データベースより)
光仁天皇の御世になって8年。物語の舞台は陸奥に移る。都で働く道嶋嶋足に対し、伊治鮮麻呂は蝦夷でありながら国府多賀城の役人として蝦夷の乱の鎮圧にあたっていた。陸奥を守るため、朝廷と蝦夷の共存を目指し腐心してきた鮮麻呂だが、陸奥守の横暴、蝦夷を人と思わない帝の勅に、ついに決起を覚悟する。狙うは陸奥守の首ひとつ。北辺の部族の誇りをかけた闘いを描く著者渾身の歴史ロマン、堂々完結。


 更新できない間に、『風の陣』の第4弾、第5弾を一気読みしてしまった。

 高橋克彦氏の東北歴史小説のリーダビリティは驚異的で、北方謙三氏の中国歴史小説を凌ぐと思う。

 超弩級の名作『火怨 北の燿星アテルイ』に始まる蝦夷3部作の前日譚である当シリーズ。

 第1巻『立志篇』から第4巻『風雲篇』までは、蔑視されてきた辺境の民=蝦夷でありながら、中央=朝廷で大出世を遂げた好青年の武人・道嶋嶋足(みちしまのしまたり/実在人物)、かつて中央での政争に破れて東北に居を移しながらも隠然たる力を保持する物部家の棟梁・天鈴(てんれい/架空人物)が主人公。2人の青年が表裏一体となって、都を主な舞台に、朝廷の侵略から蝦夷の平穏を守るため、時には権謀術数・駆け引きを駆使し、時には中央にも理解者・協力者を得て、奮闘する。

 とにかく面白い。

 ところが、最終巻ではいきなり時代が下り、舞台も東北に移り、少年からあっという間に(笑)大人になった伊治鮮麻呂(これはるのあざまろ/実在)が主人公である。物部天鈴は引き続き登場し、東北における朝廷との闘争を支えるが、嶋足はずっと都に居て名前しか出てこないのが寂しい。『火怨』で「蝦夷の中では禁忌の存在」と語られる嶋足。なぜ、そうなったのか、はっきり描かれると思ったのだが・・・。その点には不満が残る。

 『風雲篇』では、短期間ながら坂上苅田麻呂(さかのうえのかりたまろ/実在)が陸奥鎮守府将軍として蝦夷の地に赴任する。朝廷随一の武将であり、かつては嶋足の直属の上司で、嶋足を高く評価し、蝦夷に対する偏見を全く持たない。唯一、本当に蝦夷に受け入れられた中央の人間と言ってもよい苅田麻呂。その息子・坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ/実在)と鮮麻呂、阿弖流爲(アテルイ/実在)の出会いと心の交流に、『火怨』の読者としては感慨を抱かざるを得ない。

 『火怨』では、伊治地区の棟梁・鮮麻呂の導きにより、胆沢地区の次期棟梁・阿弖流爲が鮮麻呂の志を継いで、蝦夷の対朝廷戦争のリーダーとなり、征夷大将軍・坂上田村麻呂と互いを認め合いながらも、戦うことになるのだから。

 『裂心篇』において、蝦夷の棟梁のひとりでありながら、蝦夷のためにこそ朝廷に従う伊治鮮麻呂の苦難に満ちた日々。朝廷に反旗を翻すと覚悟を決めた後の颯爽とした生き方。『裂心篇』の終盤と『火怨』の序盤と重なるところが多い(確認しながら読んだ)。

 ゾクゾクする。

 『火怨 北の燿星アテルイ』を再読しなくては。

〔評価〕★★★★☆


 次は『PRIDE−プライド 池袋ウェストゲートパークX』(石田衣良・著/文春文庫)。


posted by ふくちゃん at 19:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史・時代小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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