2013年01月21日

今日を刻む時計 髪結い伊三次捕物余話




・内容(「BOOK」データベースより)
江戸の大火で住み慣れた家を失ってから10年。伊三次とお文は新たに女の子を授かっていた。ささやかな幸せをかみしめながら暮らすふたりの気がかりは、絵師の修業のために家を離れた息子の伊与太と、27にもなって独り身のままでいる不破龍之進の行く末。龍之進は勤めにも身が入らず、料理茶屋に入り浸っているという・・・。


 ここ数巻の『髪結い伊三次捕物余話』シリーズは徐々にだが、魅力が薄れ始めていた。

 手先として仕える同心・不破友之進との関係、自分の店を構えることができずに廻り髪結いを続ける自分への思い、恋人・お文の関係・・・シリーズ初期にあった若き伊三次の様々な葛藤も、彼が大人になり、お文と夫婦になり、消えていった。そして、友之進の息子・龍之進と同輩たちが見習い同心として登場し、彼らにスポットを当てた話が少し続いたのだが、このシリーズがこれまで醸し出してきた雰囲気・情緒を考えると、どこか物足りなかったのだ。

 ところが、である。

 「あとがき」に曰く、著者はマンネリ打破と自分が生きているうちに最終話を書くための時間を考慮して、この巻で一気に10年、時間を飛ばすのである。

 第1話となる表題作。前巻から10年後のファースト・シーンは、新たな登場人物=伊三次とお文の2人目のこども、9歳の少女・お吉の視点で描かれるのだが、これが実に上手い。そして、場面が変わって・・・清々しさと真っ直ぐさを体現していた少年・龍之進は27歳になり、仕事には身を入れず、職場にも実家にも寄り付かず、芸妓屋に入りびたり、そこのおかみや若い芸者と自堕落に過ごしている・・・という意外な展開。

 もちろん、これには理由があるのだが、龍之進が自分を取り戻し、実家の母と和解する(別に母親が悪いわけではない)くだりは、押さえた筆致なのに泣かせる。

 シリーズ復活どころか、ここまでのシリーズ最高傑作。10年のジャンプは大成功、英断である。失速した『御宿かわせみ』とは好対照だ。

 著者は、最終話を書くことにこだわる気持ちが消えたと「あとがき」で述べている。嬉しい限りだ。まだまだ読みたい。

〔評価〕★★★★★


 次は『神様のカルテ2』(夏川草介・著/小学館文庫)。


posted by ふくちゃん at 14:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史・時代小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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