2013年03月14日

横道世之介




・内容(「BOOK」データベースより)
大学進学のため長崎から上京した横道世之介18歳。愛すべき押しの弱さと隠された芯の強さで、様々な出会いと笑いを引き寄せる。友の結婚に出産、学園祭のサンバ行進、お嬢様との恋愛、カメラとの出会い・・・。誰の人生にも温かな光を灯す、青春小説の金字塔。第7回本屋大賞第3位に選ばれた、柴田錬三郎賞受賞作。


 先に映画を観てからの読書。

 映画と原作小説。両方に触れると、いつもならどうしても優劣をつけたくなる。そして、多くの場合、僕は原作に軍配を上げる。

 でも、この作品の場合は、どちらも悪くない。人物像の掘り下げという点では、小説の方が上だけど、映画は詳しく描写する人物をより絞り込んで、これはこれで成立している。

 映画の世之介の「現在」は35歳だったが。こちらでは40歳。しかし、冷静に振り返ってみると、祥子を演じる吉高由里子嬢はどうみても35歳には見えんかった・・・(笑)。大学生を演じているときは、ちゃんと大学生に見えたけど。

 その祥子が現在何をしているのか、映画では明示されないが、大学時代のお嬢様然とした空気は完全に取り除かれて、地に足の付いた大人の女性になっていた(この演じ分けは、ナチュラルかつ素晴らしい)。小説では彼女の今の仕事も詳しく説明される。なるほど、映画を観て、想像していたような仕事だ。思えば、世之介の実家近くの海岸で、2人してボートピープルに出会ったことが、結局、彼女をここまで運んできたんだろう。世之介もそうかもしれない。

 システム手帳、(大学生なのに)名刺、ダンパ(ダンスパーティー)、(大学生なの)にダブルのスーツ、マスコミ研究会、タンガリーシャツ、DCブランド、ぴあ、ポパイ、ブルータス、ハートカクテル、ねるとん、サラダ記念日。

 僕が大学生だった頃に、一世を風靡したアイテムがいろいろ登場して、懐かしい。実際には縁の無かったものも多いけど、目にはしてきたものばかりだ。

 とはいえ、この作品は単なる風俗小説ではない。日常的な、どこにでもありそうな青春を、温かい眼差しで、等身大で描いた作品である。時代を取り巻く風俗は変わっても、きっといつもどこかにあるものだ。

 主人公・世之介のキャラクターについては、先に映画で高良健吾君の演技を観ていなかったら、ひょっとすると嫌なヤツに感じたかも知れない。だが、映画での世之介の表情や態度が頭に浮かぶと、どうしても彼を憎めない。

〔評価〕★★★★☆


 次は、『パン屋を襲う』(村上春樹・著/新潮社)。


<追記>

作家の北原亞以子氏がお亡くなりになった。まだ文庫になっていない『慶次郎縁側日記』はあと3作あるが、もう新作を読めないのはとても残念だ。ただ、もうひとつの代表作『深川澪通り木戸番屋』シリーズを始め、読んでない作品もまだ多々ある。これから読んでいこう。ご冥福をお祈りします。


posted by ふくちゃん at 16:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 青春小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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