内容(「BOOK」データベースより)
滝のような夕立に、江戸が白く煙る午後、木綿問屋の宗右衛門が軒先に飛び込んできた。飯炊き寮番の佐七は煎餅をふるまって、老いの孤独な境遇を語りあう。普段は慶次郎だけが示してくれる優しい気遣いに触れ、佐七はうれしさを抑えがたいが、それを聞いた蝮の吉次は胸騒ぎが収まらない・・・。老境の日々を照らす小さな陽だまりを描く表題作ほか、江戸の哀歓を見守る慶次郎の人情七景。
相変わらず、このシリーズは非常にいい。ウェットすぎず、それでいて情感豊かで。
人の優しさ、哀しさ、寂しさ、愚かさ、温かさ。短い一篇一篇にいろんなモノが詰まっている。
著者の北原氏が先日亡くなって、もう新作は読めない。文庫化されていないシリーズ単行本は、あと『あした』1冊だけである(傑作選を除く)。
著者のもうひとつの代表的シリーズ作品『深川澪通り木戸番小屋』は未読なので、これから読んでいこうと思う。
〔評価〕★★★★★
次は『昨日まで不思議な校舎』(似鳥鶏・著/創元推理文庫)。