・内容(「BOOK」データベースより)
13年前の夏休み最終日、僕は「裏山」でロープを首に巻いた美少女を見つける。自殺を思いとどまった少女は、私の命をあなたに預けると一方的に告げた。それから7日間、ばらばらに存在する人や思いや過去が繋がりはじめた。結末は何処に?切なさと驚きに満ちた鮮烈デビュー作。第42回メフィスト賞受賞作。
メフィスト賞作品ということで期待して読んだのだが、久々の金返せ本。
【序章】の“過去へ”に始まり、【一章】の“一日目”から【七章】の“七日目”を経て、【終章】の“未来へ”で終わる物語。
終章の展開は予想通りだった。推理力ほぼ0のミステリ読者である僕にさえ、先が読めた。また、伏線もなく、後出しでいろんな事実が分かってくるのは、ミステリとしていかがなものか。それとも、この作品はミステリではなく、ミステリ・テイストの青春小説なのか。
だが、青春小説としてもイマイチだ。主人公の“僕”の視点が、時に高校生ではなく完全に大人のそれである。
そして、“僕”と幼馴染みの少女・由利、裏山で出会う美少女・セミの関係性とキャラクタは、村上春樹氏の『ノルウェイの森』を強く想起させる(細かい違いはあるにせよ)。つまり、二番煎じである。生き生きとした生のエネルギーを感じさせる由利は『ノルウェイの森』の“緑”であり、どこか非現実感を漂わせるセミは“直子”だ。
だが、『ノルウェイの森』のような悲劇性、切実さがない。最後まで読んで、大人になった主人公に言いたいことは「君は結局、幸せやがな!」である。思春期を過ぎても、自意識過剰な不幸ぶりっ子ではないか・・・。
やれやれ。
〔評価〕★☆☆☆☆
次は『模倣の殺意』(中町信・著/創元推理文庫)。