2013年10月11日

マリアビートル




・内容(裏表紙より)
幼い息子の仇討を企てる、酒びたりの元殺し屋「木村」。優等生面の裏に悪魔のような心を隠し持つ中学生「王子」。闇社会の大物から密命を受けた、腕利きの二人組「蜜柑」と「檸檬」。とにかく運が悪く、気弱な殺し屋「天道虫」。疾走する東北新幹線の車内で、狙う者と狙われる者が交錯する−。小説は、ついにここまでやってきた。映画やマンガ、あらゆるジャンルのエンターテインメントを追い抜く、娯楽小説の到達点!


 やはり殺し屋たちの世界を描いた『グラスホッパー』の続編。

 だが、直接的な繋がりは強くないので、独立して読むこともできる。だが、絶妙な繋がりぐあいではあるので、できれば前作は読んでおきたい。

 と、途中で思って、兵庫県の自宅の本棚を漁ったが、置いてなかった。

 このブログに書いた『グラスホッパー』の自分の感想を検索してみたら、「嫌味なほどに上手い(笑)。かなり面白い。でも、何も残らない(笑)」とある。

 だから、手元に残さなかったのだ。

 ということで、書店で『グラスホッパー』をざっと立ち読みして、こちらに戻る。

 名前だけの登場ではなく、前作に引き続いて実際に姿を見せるのは、「押し屋」(道路付近で絶妙のタイミングで、誰にも見咎められることなくターゲットの背中を押し、通行中の車に轢かせるなどして殺す。車は仕込ではない)を生業とする殺し屋・槿(あさがお)、前作で妻を殺された塾講師(一般人)・鈴木、毒殺専門の殺し屋・スズメバチのみ。しかも、皆、脇役なのだが、その配置がこれまた絶妙である。

 そして、今作の主役を張る殺し屋たちも、多彩で個性的で、彼らの行動・会話を追いかけて楽しみながら、巧みなストーリーテリングに引き回される。

 王子慧は殺し屋ではなく、容姿と頭脳に恵まれた中学生である。しかし、その内実は、他者への共感能力は欠如したサイコパスである。王子に幼い息子を意識不明の重体にされた元・殺し屋の木村は、王子が東北新幹線で一人で乗ることを突き止め、銃を手に復讐のため同じ新幹線に乗り込むが、実は王子にそのように誘導されたに過ぎない。王子の目的は、木村を嬲って楽しむことにあり、木村はその罠に落ちる。王子にとって、他人は自己のコントロール下に置いて、使役したり、苛んだりするためだけの存在である。

 この作品に登場する殺し屋たちは、ゴルゴ13のような「いかにも!」という人間ではなく、普通の人間と変わらない顔を持ち、親しみを感じたり、共感したりさえできる。

 だが、一般人であるはずの王子に共感できる読者は、そうそういないだろう。王子という「悪」が、どういう結末を迎えるか。その展開にも「やられた!」という驚きと爽快感がある。

 でも、この本も手元に残すことはないかな(笑)。極上のエンタメには違いない。

〔評価〕★★★★☆


 次は『グランド・ミステリー』(奥泉光・著/角川文庫)。


posted by ふくちゃん at 15:12| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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