2014年04月28日

女のいない男たち




・内容(単行本の帯より)
『ドライブ・マイ・カー』− 舞台俳優・家福は女性ドライバーみさきを雇う。死んだ妻はなぜあの男と関係しなくてはならなかったのか。彼は少しずつみさきに語り始めるのだった。
『イエスタデイ』− 完璧な関西弁を使いこなす田園調布出身の同級生・木樽からもちかけられた、奇妙な「文化交流」とは。そして16年が過ぎた。
『独立器官』− 友人の独身主義者・渡会医師が命の犠牲とともに初めて得たものとは何だったのか。
『シェエラザード』− 陸の孤島である「ハウス」に閉じ込められた羽原は、「連絡係」の女が情事のあとに語る、世にも魅惑的な話に翻弄される。
『木野』− 妻に裏切られた木野は仕事を辞め、バーを始めた。そしてある時を境に、怪しい気配が店を包むのだった。
『女のいない男たち』− ある夜半過ぎ、かつての恋人の夫から、悲報を告げる電話がかかってきた。


 村上春樹氏の作風は変化を続けてきたわけだが(今の作品も好きだが、昔の作品がひとしお好きだ)、この短篇集(短篇にしては一篇が長い)は昔の氏を彷彿とさせる。

 例えば、比喩の使い方。「鼻持ちならない」という人もいるだろう。僕も目の前で現実に口にされたらむかつく気がする。だが、とてもいい。

 『ドライブ・マイ・カー』『独立器官』『女のいない男たち』は、どこにも行かない、どこにも行けない、(謎を残しつつも)完結した物語だ。

 一方、『イエスタデイ』『シェエラザード』『木野』は開かれた、謎だらけの物語だ。読者は想像の翼をいかようにも広げられる。

 『イエスタデイ』の木樽とえりかと僕(谷村)の関係は、『ノルウェイの森』のキズキと直子と僕のそれを思い起こさせる。違うのは大人になった今も、3人がそれぞれに生きているということだ。今の木樽に別の物語で会ってみたい。

 『シェエラザード』の羽原は「ハウス」に監禁ではなく保護されているようだが、「ハウス」とは何か、なぜ羽原はそこにいて一歩も外に出られないのか、全く説明されない。連絡係の女(羽原が名付けた綽名が「シェエラザード」)が語る真偽不明の話の続きも気になる。続きが読みたい。

 『木野』に登場する神田(カミタ)も謎だ。彼は木野の身に何が起こったのか、その不可解で不穏な何かを、木野本人よりも知っているらしい。しかし、木野にも読者にも説明されることはない。神田が木野の身を案じていることは確かだが・・・。木野が不穏な何かと自分の中の空虚を乗り越え(あるいは受け入れ)、自分のバー「木野」に戻り、平穏を取り戻すことを祈る。

 この短篇集を読んで、「何が面白いのかサッパリ分からない」という人がいても全く驚かない。しかし、僕は堪能した。

〔評価〕★★★★★


 次は『妖怪アパートの幽雅な日常 10』(香月日輪・著/講談社文庫)。


posted by ふくちゃん at 16:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 純文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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