2014年11月09日

ソロモンの偽証: 第III部 法廷(上・下)

 


・上巻内容(「BOOK」データベースより)
空想です−。弁護人・神原和彦は高らかに宣言する。大出俊次が柏木卓也を殺害した根拠は何もない、と。城東第三中学校は“問題児”というレッテルから空想を作り出し、彼をスケープゴートにしたのだ、と。対する検事・藤野涼子は事件の目撃者にして告発状の差出人、三宅樹理を証人出廷させる。あの日、クリスマスイヴの夜、屋上で何があったのか。白熱の裁判は、事件の核心に触れる。

・下巻内容(「BOOK」データベースより)
ひとつの嘘があった。柏木卓也の死の真相を知る者が、どうしても吐かなければならなかった嘘。最後の証人、その偽証が明らかになるとき、裁判の風景は根底から覆される−。藤野涼子が辿りついた真実。三宅樹理の叫び。法廷が告げる真犯人。作家生活25年の集大成にして、現代ミステリーの最高峰、堂々の完結。20年後の“偽証”事件を描く、書き下ろし中編「負の方程式」を収録。


 第U部の感想で、同じようなことが自分の中学時代に起こった時、この小説のように自分たちの力で学校内裁判を開くことができるだろうか、きっとやれただろうと書いた。

 学校の先生にも、級友にも恵まれていたからと。

 しかし、前言撤回である。

 とてもここまではできなかっただろう。

 やはり小説だからこそ、できることだと思う。でもリアリティがないということではない。

 学校内裁判を進めていく子ども達。次々と証言台に立つ、亡くなった柏木卓也の家族。マスコミ関係者、警察関係者、元校長。柏木卓也殺害容疑者=大出俊次の子分だった生徒。彼らの柏木卓也殺害現場を見たと告発した少女・・・そして予定になかった最後の証人はなんと・・・。

 様々な人の悲しみ、苦しみ、怒り、歪みがぐいぐいと伝わってくる。

 他校の生徒であり、柏木卓也とは今は閉鎖された塾での友人だったにも関わらず、大出俊次の弁護人を引き受けた神原和彦に違和感を抱き続けた。弁護人助手となった野田健一と同じように。

 神原和彦は、その気になれば柏木卓也の死の真相を容易に明らかにできるはずだった。大出俊次の無実も簡単に示すことができるはずだった。

 なのになぜ、学校内裁判に参加するという迂遠な方法を取ったのか。

 その理由が最後に明らかになるとき、彼が心に抱えてきた荷物の重さを思わずにはいられない。

 その重さを汲んで、陪審員の子どもたちが出した評決に感動せずにはいられない。

 大人にはなかなか言えない、中学生という年代の子どもたちだから出せる評決だという気がした。

 様々な葛藤を抱える思春期の子ども達は、大出俊次さえも含めて、裁判を通して大きく成長しただろう。一生消えない苦い記憶とともに、許され、生きていく勇気を得ただろう。おそらくは、関わった大人たちも。

 宮部みゆき氏の現代物を読んで、涙が出そうになったのは初めてかもしれない。

 2015年に映画化される。この物語の密度を映像で表現するのは難しいのでは・・・と思っていたら、さすがに2部構成の作品にするらしい。オーディションで選ばれ、藤野涼子役でデビューする主演の藤野涼子(芸名)嬢は、私の中の藤野像とはちょっと合わないが、見に行くだろう。

 文庫版ではオマケとして、弁護士となった20年後の藤野涼子が登場する中編が収録されている。帯には「藤野涼子VS.杉村三郎」と書いてあるが、読み進めても途中までは何も気づかずにいた。

 『誰か Somebody』『名もなき毒』は読了しているが、『ペテロの葬列』は未読だったため(ドラマも見ていない)、ピンとこなかったのだ。でも、どこかで杉村三郎が『ペテロの葬列』のラストで探偵に転身することなると知ってしまっていた(そして忘れていた)のを突然思い出し、「ええ!あの杉村三郎!?」

 嬉しいことをしてくれる。

 気がづいた時点で、VS.とはあるが、2人が対立するはずはないと思い、安心しながら読んだ。今後も杉村三郎シリーズが続くなら、藤野涼子もサブ・レギュラーで使えばどうだろうか。

〔評価〕★★★★★


 次は、『ウインター・ホリデー』(坂木司・著/文春文庫)。


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posted by ふくちゃん at 15:05| Comment(0) | TrackBack(0) | ミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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