・内容(「BOOK」データベースより)
父は泥棒、母は結婚詐欺師。僕はパスポート偽造屋で働いており、弟はゲームの中で世界を救ってばかりいる。一家はそれなりに平和に暮らしていたが、ある日、母が結婚詐欺のターゲットに逆に誘拐されてしまう。犯人に呼び出された父と僕は、偽札が詰まった紙袋を持って母を助けに向かうが−。巧妙な伏線が張り巡らされ、驚きと涙なくしては読めない結末を迎える表題作を始め、現代の家族のかたちを描ききった傑作小説集。
本多孝好氏の作品はいくつか読んでいるが、達者な人である。
この作品は未読だったか、映画化されたということで、購入してみた。てっきり長篇かと思っていたが、『at Home』は4つの中篇の1つ。
わりに突飛な設定で家族という厄介なものを描いた4篇だが、小説ゆえに受け入れられる。
「こんなことは現実にありえない」と思う人は、小説を読んだり、映画を見たりする必要はない(笑)。現実だけを生きれば良いのだ。
フィクションの中では(ほぼ)何でも許される。
この作品もありえないようでいて、こんな家族関係もあるかもなぁ、あってもいいよなぁと思わせる。ほっこり、にんまりである。よく考えると(よく考えなくても)、陰惨なことも描かれているのだが。
それにしても、この小説に限らず、映画でもそうだが、“涙”“泣ける”という宣伝文句はいかがなものか。いいかげんにしてもらいたい。
〔評価〕★★★☆☆
次は『プリズムの瞳』(菅浩江・著/創元SF文庫)。
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