・内容(「BOOK」データベースより)
かつて最先端機種として期待を集めていた人型ロボット“ピイ・シリーズ”。しかし現在では絵を描くだけの無用の存在として各地を放浪していた。恋人との仲に悩む女性、周囲にとけ込めない中年男性、人生を見失った青年 − ピイと出会った人々は、姿だけを同じくする彼らの瞳に何を見るのか。ロボットとの対話を通して揺らぐ人々のこころを柔らかに描く、希望と祈りに満ちた物語。
“ピイ・シリーズ”とは何とも可愛い名称だが、実はプロフェッショナルの頭文字Pに由来する。
かつては外科手術等、様々な専門的技能に特化したロボットとして活躍が期待されたシリーズの総称である。
ところが、人の形を感情を持たぬ道具は人の形ゆえに、人の形を取らぬ道具とは異なり、多くの人間の心に波風を立てる。
人型ロボットのもうひとつのラインである“フィー・タイプ”は、人間と同じような感情を持ち、人間の感情を解する。それゆえに人に愛され、それゆえにやがて完全に排斥され、今はもういない。
“ピイ・シリーズ”は専門技能職を外れて、芸術的価値のない絵を描き続けるだけのロボットとしてまだ一部稼働しているが、その存在を憎む多くの人間により、侮蔑され、悪戯され、襲撃され、破壊されていく。
一方で、“ピイ・シリーズ”を守り続ける人々もいるのだが・・・。
日本人は鉄腕アトム以来、人型ロボットが大好きだが(僕もそう)、この作品を読んでいると、ペッパーぐらいならともかく、マツコロイドがさらに進化して人間と全く同じ見た目になり、人間と同等かそれ以上の知能・知性を獲得したら(ターミネーターのように)、共存は難しいのではないか、と思えてきた。
最初は驚き、喜び、もてはやすだろうが、やがては嫌悪するのではなかろうか。
菅氏の作品を読むと、いつもSFの懐の広さを感じる。
〔評価〕★★★☆☆
次は『太陽の石』(乾石智子・著/創元推理文庫)。