・内容(「BOOK」データベースより)
戦災孤児のスティーブとシェリルは、見捨てられた耐久試験場で何年も落下を続ける日本製ホビーロボット・DX9の捕獲に挑むが − 泥沼の内戦が続くアフリカの果てで懸命に生きる少年少女を描いた表題作、9・11テロの悪夢が甦る「ロワーサイドの幽霊たち」など、日本製の玩具人形を媒介に人間の業と本質に迫る連作5篇。デビュー作『盤上の夜』に続く直木賞候補作にして、日本SF大賞特別賞に輝く第2短篇集、文庫化。
デビュー作『盤上の夜』よりも断然こちらを押す。
毎日無数の少女ロボットが空から降る・・・というモチーフを最初に聞いたときは頭の中が???となったが、秀逸という他はない。
特に、フィクションとノンフィクションと見事に融合させて9.l1を描いた「ロワーサイドの幽霊たち」(なんと残酷で愚かな追悼行事か・・・)、アフガンとイエメンを舞台にゲリラの闘争を描く「ジャララバードの兵士たち」「ハドラマウトの道化たち」が見事。
人格をロボット、サイボーグ、コンピュータにダウンロードしたり、コピーしたりというのはSFでは珍しくないガジェットだが、その使い方が面白い。
未来の話でありながら、荒廃した現代を活写したようでもある。
〔評価〕★★★★☆
次は『論理爆弾』(有栖川有栖・著/講談社文庫)。