2014年06月06日

サヴァイヴ




・内容(「BOOK」データベースより)
団体戦略が勝敗を決する自転車ロードレースにおいて、協調性ゼロの天才ルーキー石尾。ベテラン赤城は彼の才能に嫉妬しながらも、一度は諦めたヨーロッパ進出の夢を彼に託した。その時、石尾が漕ぎ出した前代未聞の戦略とは−(「プロトンの中の孤独」)。エースの孤独、アシストの犠牲、ドーピングと故障への恐怖。『サクリファイス』シリーズに秘められた感涙必至の全6編。


 『サクリファイス』シリーズのスピン・オフ的短篇集。長篇の『サクリファイス』『エデン』の濃密な世界とはやや趣きが違い、すっきり淡麗なスポーツ小説。

 本編同様に白石誓が主人公の2篇。『エデン』同様にフランスのチームに所属している時の話と、さらにポルトガルのチームに移籍した後の話が、作品集の最初と最後を飾る。

 間に挟まれるのは、日本を舞台に『サクリファイス』で白石の所属チームのエースだった石尾の新人時代、エースになったばかりの頃、充分に力を擁しながらもピークを過ぎつつある時代などを描いた作品。そして、石尾の後のエース伊庭の話。

 そこにはいつも選手としての、コーチとしての赤城がいる。

 このシリーズを読むたびに、自転車ロードレースの奥深い世界に興味をひかれるのだが・・・。

 相変わらず日本ではマイナースポーツである。

 それはともかく、厳しいロードレースの世界の中に生きる人間の機微が心憎いほど、細やかにリアルに描かれている。無論、僕には実感としては理解できない世界だが、この作品を通じて想像を馳せることができる。

 いずれ、時代小説にも挑戦してほしい。

〔評価〕★★★★★


 次は『魔物が棲む町 物書同心居眠り紋蔵』(佐藤雅美・著/講談社文庫)。
posted by ふくちゃん at 21:02| Comment(0) | TrackBack(0) | スポーツ小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年01月03日

エデン




・内容(「BOOK」データベースより)
あれから3年 − 。白石誓は唯一の日本人選手として世界最高峰の舞台、ツール・ド・フランスに挑む。しかし、スポンサー獲得をめぐる駆け引きで監督と対立。競合チームの若きエースにまつわる黒い噂には動揺を隠せない。そして、友情が新たな惨劇を招く・・・。目指すゴールは「楽園」なのか?前作『サクリファイス』を上回る興奮と感動、熱い想いが疾走する3000kmの人間ドラマ。



 名前しか知らない“ツール・ド・フランス”。言い換えれば、自転車ロードレースを全く知らない僕でも名前ぐらいは知っている超有名なレース。

 白石誓は、そんな世界最高峰の自転車レースに挑む。

 ツール・ド・フランスに参加するチームに所属できるのだから、彼も凡庸ではないわけだが、ここでもエースのアシスト役である。世界は広い。白石は実力的には中堅どころか。もっとも本人は自分のレベルをわきまえ、相変わらず無欲かつ謙虚で、チームのエースを勝たせるための努力を惜しまない。

 ところが、チームはスポンサー撤退で解散の危機。自転車レースでは、チームの監督=チームのオーナーらしい。監督はスポンサー獲得のため、久々に現れた地元のスター候補生を擁するフランスのチームと連携する。すなわち、自チームのエースではなく、他チームのエースを勝たせることを要求するのである。今後の身の振り方を考え、監督に従う者も出るなか、チームの心はバラバラに・・・。だが、白石は自チームのエースを勝たせるために戦うことを選ぶ。たとえ、そのためにチームが本当に解散に追い込まれ、ヨーロッパに足がかりを失うとしても・・・。

 ひょんなことから、スター候補生・ニコラとも親しくなる白石。だが、彼にはドーピングの噂が・・・。

 ツール・ド・フランスを征するのは?チームの存続は?白石の未来は?『サクリファイス』に比べるとサスペンス色は薄いが、密度の濃い人間ドラマは『サクリファイス』に負けず劣らず面白い。

 女性カメラマンの存在が、あまり生かされていない点だけが惜しい。

〔評価〕★★★★☆


 次は『さびしい女神 僕僕先生』(仁木英之・著/新潮文庫)。
posted by ふくちゃん at 14:33| Comment(0) | TrackBack(1) | スポーツ小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月21日

武士道セブンティーン



 一気読み。同じ誉田氏の警察小説は肌に合わず1作で止めたが、こちらは大好きだ。


・内容(「BOOK」データベースより)
「強さは力」の香織と「お気楽不動心」の早苗。対照的な相手から多くを吸収したふたりだったが、早苗は家の事情で福岡の剣道強豪校に転入。そこでの指導方法の違いに戸惑う。一方、香織は後輩の育成に精を出す。互いを思いつつも、すれ違うふたりは目指す剣道に辿り着けるか。大人気剣道青春小説、二本目。


 前作同様、香織視点の章と早苗視点の章、交互に描かれるが、神奈川と福岡に離れ離れとなった2人が共演するシーンは少ない。

 宮本新免武蔵を尊敬し、『五輪書』を愛読する香織。

 その心中の、あるいは口からこぼれ出る、少々乱暴なつぶやき。いちばんの親友となり、ライバルとなった早苗への不器用な接し方。おかしい。というか微笑ましい。前作では「剣道は団体競技ではない」という考えから、個人主義の側面が強かったのに、後輩を熱心に指導する姿には成長を感じる。基本的に、生き生きとした彼女のキャラこそが、この物語の強みだと思う。

 同じ中学の同じ剣道部にいた、調子はいいがヘタレ気味の男の子・清水。彼に絡んでいた連中を素手で叩きのめすが、後日さらに今度は後輩と清水が同じ連中に連れ去られたところへ乗り込む。凶器を手にした相手に、どう立ち向かうのか。木刀を使えば簡単だが、大怪我をさせることになる。それが正しい剣の道なのか。

 一方、ごく普通の、どちらかといえば普段はおっとりした早苗。

 かつて全国中学校剣道大会の決勝で、香織に勝利したレナがいる転校先・福岡南高校の「スポーツ剣道」=ルールの範囲内で勝つことを最大限に追求するあり方に疑問を感じ、剣道に迷う。久し振りに横浜に戻った彼女は、香織が通う道場で香織の師匠に稽古をつけてもらい、スポーツ剣道を否定するために、レナに勝てないまま横浜に戻ってくるなという香織の言葉に応えるために、福岡南で最初に友達になってくれたレナとの勝負に挑む。

 自分達なりの「武士道」を見つけていく香織と早苗。父親の東京転勤を、愛しい東松学園剣道部に戻るチャンスと考えていた早苗は、福岡南に残ることを選ぶ。最終(?)の第3作『武士道エイティーン』も楽しみだ。


 次は、『短劇』(坂木司・著/光文社文庫)。
posted by ふくちゃん at 23:31| Comment(0) | TrackBack(0) | スポーツ小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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