2015年08月08日

何者




・内容紹介
就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから−。瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて・・・。直木賞受賞作。


 『桐島、部活やめるってよ』を読んで以来、気になる若手作家であるが、何となく以降の新作を読まずにここまで来た。

 音楽に関しては、40後半を越えてから、20代のミュージシャンの作品に心を動かされることが減ってきた。自分の感受性が摩耗している可能性もあるし、世代ギャップのせいもあるかもしれないが、正直なところ、一部を除いて幼稚で深みのないものに聞こえるのだ。特に詞の世界が。

 ということで、最近の若手アーティストの曲はほぼ聞かない。

 朝井リョウ氏に食指が伸びないのも、同じような理由かも・・・。

 とはいえ、『桐島〜』は結構好きだったから、自分のことながら、的を射ない分析かな。

 さて、おっさん世代から見ると、本作の特徴はツイッターを取り入れていることだろうか。まるで登場人物紹介のように、最初に彼等と彼女達のツイッターのプロフィールがまとめられている。

 作品中にもつぶやきが挟み込まれる。

 若者らしい、自意識過剰な痛い呟きである。

 その甘ちゃんな感じが、読んでいてムカムカする(笑)。

 昔の自分もこんなもんだったのだろう。

 60代の自分から見る、今の自分もそうかも。

 そんなわけで、あまり楽しめず、登場人物の誰にも共感も感情移入もできず、グダグダ感満載の読書だったのだが、最後にガツン!と来た。

 意識高い系に見せるためのツイッター用に装ったものではない、痛切で真っ直ぐで、ある意味で醜い、リアルな感情が初めて飛び出し、他人にぶつけられる瞬間である。

 そこが良かった。

〔評価〕★★★☆☆


 次は、『三国志 第十巻〜第十二巻』(宮城谷昌光・著/文春文庫)。
posted by ふくちゃん at 19:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 青春小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年05月11日

あと少し、もう少し




・内容(「BOOK」データベースより)
陸上部の名物顧問が異動となり、代わりにやってきたのは頼りない美術教師。部長の桝井は、中学最後の駅伝大会に向けてメンバーを募り練習をはじめるが…。元いじめられっ子の設楽、不良の大田、頼みを断れないジロー、プライドの高い渡部、後輩の俊介。寄せ集めの6人は県大会出場を目指して、襷をつなぐ。あと少し、もう少し、みんなと走りたい。涙が止まらない、傑作青春小説。


 久々の瀬尾作品。

 中学駅伝大会の1区から6区を走るランナー達の回想で物語は進んでいく。

 周囲に与える印象と自分が考える自分のギャップ。他人からは見えない本当の自分。他人によって初めて気づかされる、本当の自分。

 上手いだんけど・・・。

 なんか全般的に浅い。

 どろどろしない、大げさにならないのが、瀬尾さんの良いところだが、今作についてはもっと葛藤あって良いと感じた。

〔評価〕★★★☆☆


 次は・・・未定。
posted by ふくちゃん at 18:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 青春小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年10月07日

サラの柔らかな香車




・内容(「BOOK」データベースより)
プロ棋士になる夢に破れた瀬尾は、毎日公園に1人でいる金髪碧眼の少女サラに出会う。言葉のやりとりが不自由な彼女に対し、瀬尾は将棋を教え込む。すると、彼女は盤上に映る“景色”を見る能力を開花させ−。棋界に新たな風を送るサラ、将棋に人生を捧げてきたスター・塔子、数多の輝く才能を持つ七海の3人を巡り、厳しくも豊かな勝負の世界を描く青春長編。第24回小説すばる新人賞受賞作。


 物語は、金髪碧眼のブラジル日系人の美少女・サラが将棋の女流名人戦に挑むシーンから始まる。

 そして、棋士になれなかった元・奨励会会員の将棋専門誌記者・橋元の連載予定の記事によって、天才女流棋士サラ − 言語・会話を介した通常のコミュニケーション能力に欠け、天才が集う世界にあってもその常識を超えた悪手・妙手を繰り出す彼女の来歴を、我々読者は知っていく。

 同時にその記事によって、彼女を取り巻く他の登場人物たちの将棋に賭ける(賭けた)青春と挫折と希望が描かれる。

 偶然サラを見出し、将棋を教えた元・奨励会会員でパチプロの瀬尾。

 サラの対戦相手で、かつては瀬尾と恋仲にあった女流名人の塔子。

 塔子にあこがれて将棋を始め、一躍スター候補となったものの、小学校時代にサラと対戦して敗れた、もう1人の天才少女・七海。

 七海の師匠であり、現在の塔子の恋人でもある若手棋士の施川。
 
 将棋を知らなくても、普遍的な青春小説として楽しめる作品だと思うが、やはり多少は将棋を知っていた方が良いだろう。

 僕も子どもの頃は、ほんの少しだけ、将棋を齧った。才能のかけらもないことは子ども心にも明白だったが・・・。だから、将棋にせよ、囲碁にせよ、棋士といえば、とてつもなく頭の良い、直観力に優れた人という思いがある。

 橋元の記事という体裁が必要だったのか、そもそも記事とはいい難い(それこそ小説としか言えないような)表現はどうなのか、冒頭のプロローグ(前哨戦)は無駄ではないのかという気はする。

 しかし、サラの内面を見てみたい。塔子や七海との今後も読んでみたい。

 このデビュー作から2年、ようやく第二長編として続編『サラは銀の涙を探しに』が刊行された。

 文庫化を楽しみに待つ。

〔評価〕★★★★☆


 次は、『あした 慶次郎縁側日記』(北原亞以子・著/新潮文庫)。
posted by ふくちゃん at 21:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 青春小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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